まずは組織から
自動化と効率化を推進するための組織作り
RPAによる業務の自動化や、効率化をするために、まずは組織の中に、専門のチームを作ることをお勧めします。専門のチームといっても、別にそのために人を雇用するべき、というわけではありません。
詳細は次項(Step1 業務の棚卸し)に記載しますが、自動化は業務単位で行うのがベストと考えます。しかしながら、大抵の企業・事業所において、それを1人で掌握し、改善をするのは困難だからです。
また、自動化は「人間が行うのと同等の操作をコンピューターにやらせることにより、プロセスの可視化を担保する」ことが1つの肝になります。これは必須ではありませんが、そのほうが将来的な安定性に繋がるからです。ですので、個々の作業への理解がある人と、業務全体を統括できる人が必要になります。
というわけで、実際に必要な体制について述べます。1つの類型化として「管理職」「作業担当者」「システム担当者」の3つになりますが、1人の人間が複数のポジションを兼任することも(業務キャパシティ的に無理がなければ)可能です。
:管理職(リーダー)
「業務の」自動化に関しては、組織単位で行うことになると思います。また、自動化のために業務のプロセスを変更したり、自動化のためのソフトウェアの購入が必要になります。ソフトウェアはものによりますが、年間ライセンスで数十万円~といことも多いため、相応の決裁権も必要になります。
管理職が気を付けなければならない点は3点です。
1つ目は「自動化のための人的コストを事前に想定・手配すること」です。
自動化に限ったことではありませんが、組織内でプロジェクトを成功させるためには、メンバーに一定のモチベーションや、前向きに動ける環境が必要になります。
ですので、たとえば「現行の業務に加えて、更に自動化のための準備や調節も」みたいな形で人員にタスクを振った場合、過剰な負荷の原因となります。それはそのまま、「自動化・効率化」に対するモチベーションの低下や、アウトプットの質が下がるリスクを抱え込んでしまいます。
2つ目は「任せきりにしない」ことです。
いわゆる「上意下達」の方式だと、実作業を行う人同士の連携がうまく取れていない、あるいはリスクの想定・業務継続性の考慮などが正しく行われない可能性があります。ですので、管理職も(技術的な細かい点や、実作業レイヤーに触れるかどうかは別として)ある程度、何をやっているのか掌握し続ける必要があります。
3つ目は「スケジュールをきちんと立てる」ことです。
当たり前ではあるのですが、業務の改善を「漠然と」進めようとすると、いつまで経っても終わらない、になりがちです。かといって、終了日だけを決めて「いつまでに効率化する」というだけでは、進捗などが見えてこないです。ですので、いつまでに業務の洗い出しをして、いつまでにアセスメントをして、とステップをきちんと考えた計画を立てる必要があります。
(また、棚卸しや実施結果の測定は、実際にその業務を行わないと測定できないので、たとえば「月末締め処理」等であれば、そのタイミングを考慮して計画を立てないといけません)
:作業担当者
作業担当者のタスクは主に2つです。
1つは業務内容を可視化すること。
具体的にどれくらいの精度が求められるかはケースバイケースなので、組織の性質や規模に応じて、管理者やシステム担当に決定してもらう必要がありますが、何かしらの「どういう流れで業務をやっているか」という手順を明確化する必要があります。
また、自動化・効率化を機に、いままでやっていた仕事の時間が大幅に短縮される可能性が出てきますので、自動化のタイミングで今まで以上に業務全体に対する広い知見を得て、複数の作業ができるようになる必要があります。それができないと「自動化したら仕事がなくなってしまった」になりますよ。
:システム担当者
自動化のためのソフトウェアの設定などを行います。
考慮しなければならない点は4つです。
1つ目は、自動化のやり方を検討することです。
但しこれは、それ以前に「自動化すべきかどうか」という判断を管理者や作業担当者と連携することになりますし、「自動化がどこまでできるのか」の当たりをつける必要もあります。ですので「作業担当者と二人三脚で進めて、管理者の許可をとる」というスタイルになるでしょう。
自動化は必ずしも「既存の業務プロセスを堅守する」必要はなく、むしろ「既存のプロセスを効率化すると同時に行う」べきなので、「今ある~という作業はできる、××の作業はできない」みたいな判断をするのではなく、「こういう風にプロセスを変更すれば、纏めて自動化ができる」といった考え方・柔軟性も必要になります。
2つ目は、自動化のソフトウェアの選定です。
こればかりは「どのソフトウェアが向いているか」「費用的にペイできそうか」「ソフトウェア販売元のサポート体制はどうなっているか」等の検討が必要になるので、業務の規模や予算感を考えずつつ、選定を行う必要があります。(法人向けであれば、いくつかのソフトウェアはいわゆる「体験版」が用意されていますので、それを利用するのも手です)
また、導入するソフトウェアが決定する上で、社内のシステム全体を掌握する人(いわゆる「情報システム部」とか「社内シスアド」的な部署)との連携や調整も必要でしょう。ソフトウェアの導入に関して、何かしらの制限や、技術的課題が発生する可能性があるからです。
3つ目は、自動化する作業に関して、コンプライアンス(法令遵守)を視野に入れて動けるようにすること。
これは「アセスメント」の項目にもなりますが、たとえば、システムが個人情報を扱うのであれば、個人情報保護法や不正アクセス対策に関する対策を練る、経理を行うのであれば会計・税金処理において不正な扱いをしてしまわないようにする、といったように、関連する項目の知識がある程度必要になってきます。もちろん、そこは実務を行う作業担当者と二人三脚で進めてもいいのですが、任せきりにだけはしてはいけません。
最後に、自動化の実装、すなわちソフトウェアの設定です。
これは「やりたい業務内容と齟齬がでないよう」に、また「イレギュラー発生時に安全な方に動作する」ように設計する必要があります。
詳細は各種ソフトウェアのページ等に記載しますので、そちらを参考にしてください。
チーム化の必要性
最後に少しだけ、補足をしておきます。なぜ「事業内でチーム化するか」ということです。
システム専門の部署をもつ会社も少なくありませんが、そこに依頼してしまうと、システム専門部署が「個々の作業内容を理解する」必要があり、時間がかかってしまいます。
また、外部の会社に委託した場合にも同じようなオーバーヘッドが生じますし、自動化の機構そのものがブラックボックス化してしまうリスクまであります。
故に、社内で「その事業に携わっている人が」チームとして参加し、主体的に自動化を行わないと、効率化のために別の不効率を招き入れる、という本末転倒な結果になってしまうからです。
また、世間一般でよく使われる考え方として「PDCAサイクル」(Plan・Do・Check・Action)というのがありますが、組織の立ち上げは、自動化を1つの項目として見た場合、「Plan」より前の段階になります。そのため、あえてここでは「Step 0」と記載しました。